Act.27













眠り姫をヒソカに預けたケイは、イルミの隣を意気揚々と歩いていた。
なんだか分からない歌のオマケ付で……。



「ソレ、なんの歌?」
「ん〜。何の歌なんだろうな。」
「知らないのに歌ってるの?」
「よくわからないんだけど。なんか、耳について離れないんだよねぇ。」
「ふーん。」



話していると、合格者の列が一端止まった。



「着いたみたいだな。」
「うん。」



目の前に見える扉が開くと、中に入るよう促される。
席は自由席らしい。



「イルミ。一緒に座ろうぜ。」
「うん。いいけど。」





説明会が始まって数分経つと、試合中の負傷のため控え室で休んでいたゴンが入ってきた。
視線が一気にゴンに注がれた。

ゴンはレオリオの呼びかけにも応答せず、一直線にイルミの座っているテーブルまで来て止まった。



「キルアにあやまれ。」
「あやまる…?何を?」
「…?」



どうやらイルミはゴンの言わんとすることが分からないようだ。



「そんなこともわからないの?」
「うん。」
「お前に兄貴の資格はないよ。」
「……兄弟に資格がいるのかな?」



イルミがそう応えるやいないや、ゴンはイルミの手首を掴み、思い切り引っ張った。
全員がゴンの行動に目を見開かずにはいられない。
あの…ケイさえも。


イルミの足が床につくと、ゴンは言い放った。



「友達になるのだって資格なんていらない。」
(ふ〜ん。やるねぇ〜、コイツ。あのヒソカが言うだけはあるか……。)



ケイはイルミの隣で頬杖を突きながら、ぼんやりと思った。
目線の先では、ゴンがイルミの手首を掴んだまま向かい合っている。
よく見ると、ゴンに掴まれているイルミの手首をミシミシと音を立てて、悲鳴を上げている。

ケイはゴンの行動が面白いので、そのまま見ていることにした。

どうやら彼は友達を連れ戻したいらしい…。
それからは他の合格者たちが自分の合格について異議を唱え始めた。



(いいじゃねーか。合格したんだから…。)



後方で繰り広げられる、バトルに少し飽きを覚え、不意にセナのようすをみることにした。
セナは相変わらず寝ている。
アイツは何時間寝れば済むのだろーか。

ケイは方杖を突き直して、イルミに視線を戻した。
イルミの手首は、まだゴンに拘束されたままだ。


ボーっとみていると、行き成りイルミがゴンに向かって手をかざした。
これまでの行動を黙って見ていたケイでも、これはヤバイを思った。



「イルミッッ!!!!」
「――!」



ケイの怒鳴り声と同時にゴンも不可解な危険信号を感じとり、イルミから離れた。

その後、ネテロが話し始め、説明会を再開した。
マメさんが前にきて、ハンターカードの説明をしてくれた。


それが終わると退場するべく立ち上がった。


ケイが歩き出すと、後ろにいたイルミがゴンに捉まっていた。
どうやら、キルアの居場所を聞かれているらしい。



「ともあれ、次に会うまで諸君らの息災を祈るとしよう。」



ネテロが締めくくった後、説明会は解散した。








「いいのかい?殺し屋が自分のアジト教えちゃって。」
「うん。隠してないし。地元じゃ有名だしね――。」
「………ねっ、ねむい!!」
「ん?どうしたの、ケー。キミが眠いなんて珍しいね。」
「さっきの説明会で、ぼーっといてたら、眠くなちゃってさぁ…。」
「ふう〜ん。」



珍しくマトモなヒソカではあったが、セナを抱えているのであまりマトモそうに見えない。
セナを押し付けた、ケイはケイで徹夜疲れで眠気に襲われたようだ。
目を擦っている。



「そういえば、イルミ。」
「何?」
「腕折れてんだろ?」
「だね。」



イルミの肯定の言葉にヒソカの顔がにやつく。



(……変態め…。)
「面白い素材だ。」
「ヒソカが見守りたいって気持ちがよくわかるよ。」
「だろv」
(気色悪いぞ。バカ野朗ーー!!)
「ケイ。キミ、今失礼なこと思ってなかった?」



ケイは首を横に振る。



「そうかい?」



その後もイルミとヒソカの会話は続く。
だが、ケイは眠気に耐えられくなり、意識が無くなりつつあった。



(あ、ヤバイ……。…このままじゃ…床と………。)



ケイの体が前に倒れる寸前でイルミがケイの体を支えた。



「ケー。どうしたの?」
「――zzZZZ―。」
「彼、寝てるよ?」
「みたいだね。」
「どうしようか。この2人。」



ヒソカが俯きかげんのケイの顔を覗き込む。



「しょうがないから、家に連れてこうか。」
「そうだね。」



そういうとヒソカがケイのヒップバックから携帯を取り出した。
そしてなれた手つきで、ある番号を探す。



「あ、あったあった。」



発信ボタンを押して電話かける。
数コールすると、相手が電話にでた。



『もしもし?』
「久しぶりだね。シャナ。」
『あぁ、ヒソカ。久しぶり。どうしたの?ケーの携帯から掛けたりして。』
「それがね。今、ハンター試験が終わったところなんだけど、ケイが寝ちゃってね。」
『ケーが?珍しいわね。』
「セナも寝てるからさ。」
『そう。大変ねー。』
「…だから、これからイルミと家に行くから。」
『わかったわ。二人ともお疲れ様。じゃーねー。』






「シャナ、なんだって?」
「寝てるっていったら。大変ねーだって。」
「あっそう。時間が勿体無いから早く行こうよ。」
「……。」












イルミはケイを担いで、ヒソカはセナを担いで自家用機に向かいましたとさ……。


三人の住んでる家に着くまで数時間。












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