Act.26
出口に向かおうとするイルミに、三人の青年が立ちはだかった。
「まいったなあ…。仕事の関係上、オレは資格が必要なんだけどな。ここで彼らを殺しちゃったら、オレが落ちて自動的にキルが合格しちゃうね。」
独り言のようにイルミが喋り続ける。
「あ、いけない。それはゴンを殺ってもいっしょか…。そうだ!」
イルミは考え抜いた末にいい方法を思いついたようだ。
「まず合格してから。ゴンを殺そう!」
いい解決案が出、弾むような声色の兄の発言にキルアの理解できない汗が量を増した。
カラダは相変わらず、石造のように兄に対する恐怖で固まったままだ。
「それなら、仮にここの全員を殺しても、オレの合格は取り消されないよね。」
念をおすように、ネテロの方に言葉を向けた。
そして、それに同意するネテロ。
キルアの視線がリングの床から、兄の背中に移った。
ソレを感じて、イルミがキルアに話しかける。
「聞いたかい、キル。オレと戦って勝たないと、ゴンを助けられない。」
振り返り際に、自らの弟に問いかける。
「友達のためにオレと戦えるかい?できないね。」
自分で問いかけておきながら、自分の考えるキルアでコタエを述べた。
理由を告げるために息をすった。
「なぜなら、お前は友達なんかより。今、この場でオレを倒せるか倒せないかの方が大事だから。」
自分ココロを言い当てられたのだろうか。
キルアの瞳の大きさが増した。
兄が近寄るにつれてカラダが震えだし、本能がこの場から逃げ出せと叫んでいる。
ツカツカと弟との距離を縮めたイルミはキルアのホンシンを分析する。
「そしてもうお前の中では答えは出ている。“オレの力では兄貴を倒せない”勝ち目のない敵とは戦うな<Iレが口をすっぱくして教えたよね?」
また、いっそうキルアの瞳が見開かれる。
「動くな。」
短く告げられた言葉にカラダが反応した。
キルアに手をかざしながら、戦闘態勢をとる。
「少しでもうごいたら戦い開始の合図とみなす。同じくお前とオレの体が触れた瞬間から戦い開始とする。止める方法は一つだけ。わかるな?」
話しいるときでさえ、イルミとの距離は縮まる一方だ。
「だが…忘れるな。お前がオレと戦わなければ、大事なゴンが死ぬことになるよ。」
なんとも理不尽な言葉。
レオリオが耐えかねて、キルアに叫びかけた。
「やっちまえ、キルア!!どっちにしろ、お前もゴンも殺させやしねぇ!!そいつは何があっても俺たちが止める!!お前のやりたい様にしろ!!」
イルミの指先がキルアの髪に触れる寸前で、キルアが声を絞りだしていった。
「……まいった。オレの……負けだよ…。」
負けの言葉に喜びを示す兄。
「あー、よかった。これで戦闘解除だね。はっはっは、ウソだよキル。ゴンを殺すなんてウソさ。
お前をちょっと試してみたのだよ。でもこれではっきりした。」
弟の頭を撫ぜながら、イルミがこう続けた。
「お前に友達をつくる資格はない。必要もない。今まで通り親父やオレの言うことを聞いて、ただ仕事をこなしていればそれでいい。
ハンター試験も必要な時期が来れば、オレが指示する。今は必要ない。」
この言葉を最後にギタラクル対キルア戦は幕を閉じた。
そのあと、レオリオ対ボドロ戦は重たい空気の中始まった。
だが、試合開始の直後にソレを起こった。
試合開始と同時にキルアが後ろから自分の鋭い爪でボドロに一撃を与えた。
「っ!おいっ!!キルア!!」
選手を殺したキルアを委員会を不合格とみなした。
全試合が終了したので、合格者たちは説明を聞くため他の場所に移動することとなった。
集合の声を聞いて、いままで頭を抱えてながら何事か唸っていたケイが我に返った。
その後ろでは、あの重い空気の中眠り続けたセナがいる。(眠りは現在進行中だが)
「なんだ、試合終わったのか。」
そして、ねぼすけをおこすために近寄った。
「おーい。セナ!!試合終わったぞ!!!」
「―――zzZZZ。」
「こいつ、まだ寝てるよ。」
呆れて溜息しかでない。
試しにつねってみたが、なんの変化も見られない。
相当、寝が深いらしい。
「しゃーねー。担いでくか。」
そしてキョロキョロと歩いていく合格者たちの中でアイツを探した。
「おー。いたいた。おーい、ヒソカぁ!!」
ヒソカは瞬時にケイの呼びかけに気付いた。
だが、前々回じゃけにされたので、拗ねていた。
だが、向こうから聞えるケイの声に吸い寄せられるようにいってしまった。
(ボクってどうしてケイには逆らえないんだろ…?)
「ヒソカ来てくれて、サンキュー。助かったぜ。」
ケイが語尾にハートマークを付けるので(そうヒソカには聞える)、ヒソカはくらりとしてしまった。
「いいよ。君のためなら…。」
そういいながら、ヒソカはどこか遠くを見つめていた。
同時に頬を可愛い色で染めているのは気のせいだろうか。
いや、気のせいに違いない。
「じゃっ、早速だけどセナ運んでナ。」
「もちろんさ。…え?今なんて。」
「じゃ、よろしくなぁ〜。オレはイルミと先いってるからさ。」
ケイが駆け出していく方向にはイルミがいた。
また、裏切られたヒソカであった。
この男が報われる日が来るのは…………
本人の心がけにかかわらず、作者が決めるので当分の間は訪れないだろう―――。
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