Act.14
ケイがヒソカと別れた頃、セナは今夜の寝床を作る為に木に登っていた。
セナが今登っている木は、辺りの木より背が高く、この森全体が見渡せるほどだった。
難無く登っていく様はまるでサルのようだ。
快調に木の真ん中あたりに来て、セナが次ぎの枝に足を掛けよとした瞬間…。
セナの目の前に、自らの糸にぶら下がっている、クモが現れた。
「……くっくっくっくっっくくくくくく、くもぉぉぉ〜〜〜!!!!!!!!!」
そう声を張り上げて叫んだ後、セナの顔から血の気が引いていき、気を失うのに時間はかからなかった。
それと同時刻、セナの叫びを聞いたクラピカが『クモ』いう言葉に反応して、その目を緋色に染めたのは言うまでも無い。
レオリオは殺気立ったクラピカを押さえるのにかなり骨を折ったとか、折らないかったとか。
――第四次試験 二日目
適当な木の上で、一夜を明かしたケイ。
そのドス黒い(禍々しいとも言う)オーラ(念と関係ない)が、ケイの身を守ったのか、無防備に寝ていたにも関わらず、ケイには敵襲の一回も訪れなかった。
「ふぁ〜、よ〜寝た。」
寝ていた枝の上に立ち上がり、欠伸と共に大きく伸びをする。
だが、寝覚めのいいケイだが、今日は如何しても爽快な気分になれなかった。
理由はと言うと…。
それは、連日の試験の所為で、汗だくになりあまつさえ返り血が付いているという姿だったからだ。
傍目では、なんら変わりのないケイだが、内心では。
(あ゛〜、風呂入りてぇ〜、水浴びしてぇ〜。)
などと思っていた。
このままでは嫌なので、ケイは水浴びをすべく、適当な湖又は池を探すことにした。
思い立ったら吉日っが、今のケイの心境そのものでケイは枝伝いに走り出した。
数分ぐらい走っただろうか、ケイの耳に水のせせらぐ音が聞えた。
どうやら水辺は近い。
そう思いながら次の枝を踏み越すと、ケイの目の前に湖が広がった。
「やった〜、オレってラッキー。」
喜び勇んで、今いる枝から湖の前まで着地する。
無事着地すると、ケイは少しはしゃぎながら、服を脱ぎ始めた。
もちろん、脱いだ服はちゃんと畳んでおく。
全部脱ぎ終わると、勢いをつけて湖の中に飛び込む。
水は冷たいが汗を流すに支障は無いだろう。
ケイが飛び込むと、バシャッという音を立てて、水飛沫が上がった。
ブハーっと、水から顔を出すとケイの満足げな顔がうかがえた。
ケイはこの湖が気に入ったようで、泳ぎまくっている。
すると、周りに変な気が感じられた。
ケイは気付かないフリをして、湖の周りを盗み見ると、自身は隠れているつもりなのだろう、木の陰に身を潜めて、懸命にこっちを見ている野郎を発見した。
(アイツか、変な目でこっち見てたのは。ヒソカ並みの変態野郎だな。)
そんなことを思いながら、泳ぎ続けていると覗き見野郎(ケイ命名)が音も無く消えた。
呆気に取られていると、覗き見野郎がケイの頭上にいた。
「女ぁ〜、くたばれ〜!!」
プレートを奪う為なのか、覗き見野郎は持っていた槍のような武器をケイに向かって投げつけてきた。
「オレは女じゃねーの。よく見ろよ、おっさん。」
投げてきた武器をかわしながら、余裕げにいう。
覗き見野郎は飛び込んできたので、当然水に浸かる。
ケイがその瞬間を見逃すはずはない。
隙を見て、髪に忍ばせていたナイフを覗き見野郎の心臓めがけて放った。
ナイフは見事命中し、自分がどうなったか考える暇もなく覗き見野郎は絶命した。
覗き見野郎から出た血が、水面を漏れたインクのように広がった。
ケイは湖からあがって服を着ると、未だに水面に浮かんでいる覗き見野郎を湖から引っ張り上げた。
身体はまだ水を含んでおらず軽かったので、作業は手間を掛けずに済んだ。
覗き見野郎の服をあさって、プレートを探した。
ポケットを探っていると目当て物が見つかった。
「ん…、七番か。じゃぁ後、二点集めればいいのか。」
覗き見野郎は七番だったらしく、ケイのターゲットではない、すなわち一点分にしかならない。
ケイは奪ったプレートを鞄に入れると、覗き見野郎を蹴飛ばして、再び水の中に入れた。
今回は何故かブクブクと音を立てて、底の見えない湖に沈んでいった。
コレが噂のケイマジックに違いない。
「まぁ、精々、魚のエサになるんだな。じゃーな、おっさん。」
ケイは湖を後にして、霧が出てきた森の中に当てもなく消えたいった。
湖のなかでは、覗き見野郎が魚のご馳走になっていく場面を想像しながら。
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