Act.06
豚を焼きブラハに引渡し合格したケイは、木の上の目線に気付き、その方向を一人向いていた。
木の上にいたのは、一次試験の試験官――サトツだった。
ケイはサトツにガンつけしていた。
ケイの背景は前回と同じ…、いやちょっと変化していた。
サトツはケイの後ろに地獄のような黒いモノとその地に悶えている者達が見た。
冷や汗を流す。
ケイはその反応に満足したのか、今までとは違ったニカっとした微笑を向けて視線をブラハに戻した。
周りの受験者たちはビビリまくりだ。
ビビって無い者が約三人いますけど……。
「アイツ、共食いしてやがる。」
「言いすぎだよ。ケイ。」
豚の丸焼きを七十頭その腹に収めたブラハに対してのコメントである。
無事二次試験(後半)に進んだ、ケイはセクシーな服の女試験官――メンチの説明を聞いていた。
「あたしはブラハとちがってカラ党よ!!審査もキビシクいくわよー。」
「二次試験後半あたしのメニューは…スシよ!!」
受験者達は聞きなれない言葉に唖然としている、自分の脳細胞をフルに活用してスシというものがどんな食べ物か、必死に考えていた。
だが、その中でもケイは余裕の表情を浮かべていた。
(スシか、いい趣味してんなあの女、よし豚狩ったとき河があったな、あそこで取るか。)
腕を組みながら、そんなことを考えているとヒソカが声を掛けてきた。
「ケイ。君、料理上手だから、スシがなんだか知ってるよね。」
「まぁな。ってお前食ったことあるだろーが。」
「えっ、いつだい?」
「オレが、折角イルミの為に作ったスシを、おめーが横から食ったんだろうが!!」
その会話を繰り広げながら、ヒソカはその日のことを思い出していた。
ちょうどその日は、ケイがイルミの家――ゾルッディック家に遊びに行った日だった。
呼ばれなかったことに少し腹を立てながら、屋敷の窓から入ってきたヒソカはケイがイルミに何かを上げているところを見て、
さっと横から奪ったことがあった。
その後ケイには散々嫌味を言われた、当然だ。
「折角、イルミ為に作った物を!!ヒソカ、おめーはオレのこの手で引導を渡してやる!!!」
「まぁまぁ、ケイ。許してあげなよ。」
「だって、イルミ。」
「ヒソカはオレがキチンと躾ておくからさ。ね?」
「イルミがそう言うなら…」
回想が終わり、現実に戻る。
「あぁ、そういえば、そういうことがあったね。」
「あるんだよ!!この変態!!」
あっけらかんと言うヒソカに、首を掴んで激しく揺さぶる。
「はぁー。教えてやるよ。スシはな手のひらサイズの食べ物だ。」
「そういえば、小さかったね。アレ。」
「あと、魚肉を使うのさ。」
「それだけ、あれば十分だよ。」
「じゃっ、そういうことで。」
「ありがと。」
片手をあげて、森の方へ走っていった。
ケイが河で魚を獲っていると、試験会場の方でデカイ声が聞えた。
ケイは二、三匹手ごろな魚を捕まえると、足早に試験会場に戻っていた。
厨房は誰も居ず、ガランとしていた。
適当に場所を選んで、手を洗い、よく磨がれた包丁をクルクル回しながら魚を下ろす準備に取り掛かる。
「おー、この包丁良く磨いであるな。使いやすいぜ。」
魚を三枚に下ろして、シャリに乗せる大きさに切っていく。
それが一通り終わって、シャリを作る作業に取り掛かる。
手のひらに適度にシャリをのせて、軽く二本指を沿えて、また軽く握っていく。
歯で解れるような強さにまでにすると、スシに付き物のワサビを手にとって、少量のせる。
「あの女、カラ党っていってな、ちょっと多めにしとくか。」
そういって、ワサビの量を増やした。
十個ぐらい出来た頃であろうか、居なかったほかの受験者たちが帰ってきた。
そしてまな板に魚を広げ、思い思いのスシを作っていく。
ケイはその光景を楽しむように見ていた。
すると、後ろからセナの声がした。
「ん?」
「ケイ。くれ。」
そういって、ケイに向かって手を出す。
セナの後ろにいるキルアは、そんなセナの行動に驚いていた。
キルアは目の前の男――ケイがヒソカと一緒にいるところ見たので、まさかそんな奴にセナがそんな行動を取るとは思わなかったのだ。(常人なら当たり前。)
「お、おいセナ…。」
「ケイ、出来てんだろ。食わせろ。」
「お前、ホント好き勝手やってるな。」
「文句あるか。」
「はぁ〜、お前試験どうすんだよ。」
「来年また受ければ良いし。俺、ぜってー料理できねーもん。」
「あっそ。しょうがねーな。やるよ。」
セナの差し出された手にスシを二個置く。
「そっちの、弟くんは?」
「い、いやいいです。」
「そ。」
ニッコリスマイルで聞かれて、内心焦りながら、答える。
でも、キルアの中でさっきのケイの言葉が引っかかった。
(えっ、今弟くんって…。)
キルアとの会話のあと、周りをキョロキョロしだしたケイ。
誰かを探しているようだ。
「それより、セナ。変態と今は針山の美青年見なかったか。」
「変態はあっちで針山の兄貴はあっちにいた。」
指でそれぞれの方向を指し示す。
「じゃぁな、セナ。」
「あぁ。また今度、それ作れよ。」
「はいはい。お姫様。」
そしてケイはセナとキルアの前から、去って行った。
セナをそれを見送りながら、ケイの作ったスシをパクついていた。
NEXT→