今日はゾル家を訪ねてみようと思う。










ゲームコマンド  01










例のゲートを通って我らが暗殺一家ゾルディック家の広い庭の片隅に出た。


庭を(感とラッキーを頼りに)道なりに進むと、個性的な髪型の少女に出くわした。





「やっほー、カナリア久しぶりー。」
「あ、セナちゃん!!」




歳も割と近いせいか(実際どれくらい離れてるか知らないけど)カナリアはセナちゃんと呼んでくれた。
そういえば、もう一人ちゃん付けで呼んでくれる銀髪の可愛い子がいたっけ………。
暫く会ってないから寂しいなぁ……どうしてるかなー。




「で、今日はどうしたの?」



ぼーっとしているとカナリアが尋ねてきた。



「普通に遊びに来た。」
「執事室に連絡してあるの?」
「ううん。いつもの方法で来たからカナリアしか知らないよ。」
「そっかぁ。じゃぁ、私から連絡しておくね。」




そういうとカナリアは杖を片手に持って、ポケットから無線機を出した。



「ちゃんと言っといたよ。」
「いっつもありがとうー。」



小さな執事見習いに手を振って、その場を後にした。


しばらくして執事室の前に着いて、主人達が住んでいる館に通された。




「今日イルミいるでしょ?」
「仕事はないと伺っております。」




名前も知らない執事さんが答えた。

ってセナ、相手がいるかいないか前もって調べておきなさいよ。




「そっか。ありがと。」




気が付けば、そこはイルミの部屋の前だった。


コンコンっと軽くドアノックを鳴らす。




「いーるみくーん。」



一声掛けると中から扉が開いた。




「…セナ…?どうしたの突然来たりして。」

「遊びに来たー。」
「そう…でもいま手が離せないんだよね…。キルの部屋に行ってなよ、オレも後から行くからさ。」
「はぁーい。」





きっとゲームやってる筈だからと付け加えて、キルア部屋の場所を指した。(突き当たりだけど)




また目の前の大きな扉を叩いた。




―大きく息を吸って……




「きぃーるあくぅーん!あっそびまっしょぉーー!!!!!!」



―…………………。



「返事がぬぁぁあああいぃ!!!!!!!!」




強引に扉を押しのけて部屋の中に入る。
その部屋の住人は酷くビクついていた。




「はっ!?」

「良いか!!もう一回やるからな!!!!!!ちゃんと返事しろよ!!!!」

「あ、あぁ…。」

「よし。」




セナはそういうと外した扉の片方を元に戻した。





「きぃーるあくぅーん!あっそびまっしょー!!!!」

「はぁ〜あ〜い。」






扉の向こうから蚊の鳴くような声が聞こえた。

このやり取りはさながら某子供にしか見えない純真な動物の映画のようだったと、その現場を目撃したメイドが証言している。



部屋に入るとテレビの画面が明るかった。



「何のゲームやってたんだ?」
「×○△ダンジョンストーリー。ジャスティス・せーちゃん+」
「あぁ…一昨日出た新作かぁ。」
「あと一面でラストなんだぜ!」



キルアは誇らしげに言った。



「そうなんだぁ。俺は終わったけど?」


ふふんと言う効果音を付けて言い返した。



「へっ!?」

「のんびりやったから、1日掛かったけど。」
「ありえねぇ!!これシリーズで一番難しいって言われてんだぜ!?」
「俺様に掛かれば屁でもないさ。」
「うそーん。」



キルアは相当悔しがっているようで、うっすらと涙を浮かべていた。



「こうなったら……。」
「こうなったら??」




「格ゲーで勝負だっ!!」


「ふっ、望むところさ。」












 + + +













「これでどうだ!!!」
「甘いよ、キルアくん。溶けかけた飴より甘いよ。」
(何か、キャラ違くねー?それより例えが意味わかんねぇーよ。)


「くそっ!次はこうだっ!!!」




現在の勝敗は40勝0敗でセナが優勢。

つまりキルアは負けっぱなしというわけだ。



「まだまだだねぇ。」



お決まりの台詞でこの回もセナが勝利した。





「お前何でそんなに強いんだよぉ………。」
「んー……何でだろうねー。」
「ムカつくー………。」





―コンコンッ




軽いノック音が部屋に木霊した。




「お茶でも持ってきたかな?」




キルアが立ち上がって扉に近づく…。




「いや…多分……。」




セナが言いかけた言葉が終わるよりも扉が開く方が早かった。




「遅れたね、セナ。」
「あ、兄貴ぃ!?」
「…イルミだと思うよ?」




3人同時に言葉を発した。












 + + +











「な、何で兄貴が来るんだよ!!」
「いいじゃないか、キル。オレだって偶には(弟と)遊びたいお年頃なんだよ?」

(お年頃って何だお年頃ってぇ!!)

「イルミやっと来たぁー。」
「や、遅くなって悪かったね。」
「お菓子持ってきたぁ?」
「もちろん。あ、キルの分ちゃんとあるからね?」
「…………………。」
「…?どうしたのキルア??」
「べ、別に…。」


キルアはぷいっとそっぽを向いてしまった。


(イルミもブラコンだよなぁ………。)

イルミの一連の行動をそう心の中で確認するセナだった…。



はい、と手に持っていたバスケットをセナに渡した。

バスケットの中身はチョコチップクッキーだった。



「わー!チョコチップだ!チョコチップだよ、キルア!」
「あーそーですか、よかったですね。」

「……なんで棒読みなのかな?キルアくん?」


つねっとキルアの両頬を引っ張ってみる。



―みょいーん



「ご、ごめんなひゃい………。」




キルアは本能的に謝った。








+ + +








「てかさ、兄貴ってゲームやったことあるわけ?」




セナと引き続き格ゲーで勝負しているキルアが振り返っていった。



「それぐらいあるさ…。」


後ろのソファで持参のアールグレイを飲みながら優雅に答える。


「ふーん…じゃぁ、セナと勝負してみてよ。」

「いいよ。」(あっさり)



イルミは立ち上がった!(ぇ



「え?イルミ俺と勝負するの?」
「うん。セナとやるのは久しぶりだね。」
「セナ、前に兄貴とやったことあるのか?」
「うん。大分前だけどね。」
「…へぇー。(一体何者だよコイツ)」





「じゃぁ、やろっか。イルミ?」

「久しぶりだから負けないよ。」





















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2005/09/22  Ryuga Naoto