カツン、カツン、と二人分の足音が廊下に響く。

長く、人気のないそこには小さな物音でもよく聞こえた。












「なぁ、セナ」
「何?」

先を歩くセナが振り返る。
俺は隣に並んで疑問に思っていたことを口にした。


「あのメール、一体なんなんだ?」
「メール?」
「シェルのところに送ったやつだよ」

ああ、とセナは頷く。





『サラちゃん一人貸してください』

それが送られてきたメールの内容だった。


まるでビデオか何かのレンタルを申し出るような言い回しは、俺にとっては謎なことこの上ない。
それに何より、何故俺が必要とされているのかも気になったのだ。


だが、セナから返ってきたのは「着いてくればわかる」という曖昧な答えだけ。


益々不審に思いながらも、俺はただセナに着いて歩いた。






***





「ケー、サラが来たよー」

扉を開き、のほほんとした声でセナは言った。
しかし、それに対する答えはない。


俺はセナに続いて部屋に入った。
そこにいたのは、セナを除いて二人。



「…よう」
「や。意外と遅かったね」
「まあ、来る前にいろいろあったからな。っつーかイルミも呼ばれてたのか」
「うん」

優雅に足を組んでコーヒーを飲んでいるイルミは、どうやら俺が来るだいぶ前からいたようで、俺が来ることも既に聞いていたらしい。
恐らく、呼ばれた理由は同じだろう。


「なぁ、イルミはどうしてここに呼ばれたんだ?」
「詳しいことはまだ聞いてない。でもかなり厄介なことになると思うよ」
「厄介?」
「うん」

相変わらずの無表情で、少し覚悟しといたほうがいいよ、とイルミは付け足した。
何か、嫌な予感がする。



俺はイルミの隣の椅子に座り、改めてケイを見た。
イルミの正面の席に腰掛けているケイは、何故か机に突っ伏していて、全く生気が感じられない。
セナが肩を揺らして起こそうとしているが、ケイは無反応。


……本当に生きているのだろうか。




「ケー、起きろよ」
「……………」
「せっかくサラが来てくれたんだぞー」
「……………………」
「ケーーーーーー!!!」
「…セナ、退いて。俺が起こすよ」

とうとう見兼ねたのか、イルミが立ち上がった。


セナがやっても起きないのに、一体どうやって起こすんだろう。



イルミはケイの背後に立ち、肩を掴んだ。
セナは言われた通りに一歩離れたところから見ている。




「ケー、起きなよ」
「…………」
「ケー。起きないと―――――――」

耳元で何事か囁いたようだったが、あまりにも小声だったせいでよく聞こえなかった。
しかし効果はあったようで、ガバッと勢いよくケイは起き上がった。
そして、目を三角にして叫んだ。







「オラァ出て来いヒソカー!!!!ブッ殺してやる!!!」










「………イルミ、ケイに何言ったんだ…」
「大したことじゃないよ。ただ“起きないとセナがヒソカと結婚するって言ってるよ”って言っただけだから」
「………………」

しれっと、とんでもないことを口にするイルミはやはりさすがだと思う。




俺はなんとも言えない心境でケイの様子を眺めた。

ケイは外に向かって大声で怒鳴りながらヒソカを探している。
一方のセナは「ヒソカ?」と疑問符を浮かべてきょとんとしていた。








世の中には知らないほうが良いこともある。

…………………………………………………………………………………多分。













To be continued...


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短くてごめんなさい。結局1500文字書かなかった…。

Written by Haruki Kurimiya.